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【コラム第25号】「脳の可塑性」~人生を諦めない


長年にわたって引きこもりをしていた精神障害などの当事者と話をすると、自宅から出てグループワークへ参加するようになって、自分の人生や可能性について考え始めるようになっています。

 

 

さて、「可塑性」という言葉は、粘土などで物を作る時、人の手でいろいろな形に変化するのを「可塑性」と言います。

 

そして、「脳の可塑性」とは、脳が粘土のように形を変えて、成長発達していくことを指しています。

 

学習活動によって、「脳の可塑性」が起きてくるのです。

 

つい最近まで、「脳の細胞は再生しない」と考えられていました。

 

しかし、最新の研究では、大脳辺縁系の海馬や大脳前頭前野(額のあたり)の一部に、再生能力があることが分かってきています。

 

また、脳神経細胞自体は再生されない部分でも、脳に張り巡らされている”シナプス”(細胞同士をつなぐ電線のようなもの)は、さまざまな学習活動によって活発に広がって伸びていくのです。

 

 

つまり、ストレスなどによって破壊された脳機能が、脳の可塑性によって再生される可能性があるのです。

 

可塑性が起きることで、日常生活での不便が減ったり、対人関係がスムーズになったり、社会的な興味関心が広がったり、

理解能力が高まったり、運動能力が高まる方も居ます。

 

ただ、これには個人差があるので、みんなが同じようになるわけでありません。

 

 

さて、私はこの「脳の可塑性」に自分の全力を傾けて、当事者グループワークの活動をやってきています。

 

ただし、脳の可塑化を可能にする作業となりますので、その効果が見えるのに必要な期間が数年間などではなく、10年も20年もかかるかも知れません。

 

ですから、この作業は、当事者が自分の人生をやり直すぐらいに考えておかないといけません。

 

「本当に効果があるのだろうか」と疑われる方が居ます。

 

それは仕方がないことです。

 

これは、「信じる人は救われる」の宗教と同じようなものです。

 

私は、当事者が「自分を信じられるかどうか」が決め手になると考えています。

 

人生は、諦めたら損です。

 

私も、そう思う人を精一杯に応援していきたいと思っています。