発達障害や精神障害などの方は、死んでしまいたいと思うほどのつらさや苦しさがあります。
「どうして自分の人生はこんなに不幸なのだろう」と、他者と比べて不公平な自分の生い立ちに絶望します。
私は運命論者でありませんが、嫌であっても、現実というものを受け入れることしか方法がないと考えています。
さて、悩みはカウンセリングを受けることで、その苦しみが幾分か和らいできます。
しかし、カウンセリングというのは、悩みや問題を解決するのが、本来の目的でありません。
その先があるのです。
人間が生きているということは、さまざまな悩みや問題が起きてきます。
それは、ある意味自然です。
悩みや問題が起きるのは、生きているからなのです。
カウンセリングで大事にしたいのは、当事者が起きている悩みや問題と、どのように向き合って、そこで何を学ぶかというところです。
「人間の成長」と言う言葉がありますが、それは悩みや問題を通して、どれだけ人間的な成長をするのかということです。
この「人間的成長」ということでは、発達障害の方も精神障害の方も同じです。
発達障害や精神障害の方は、とてもつらい苦しい分だけ、その人間的な成長が大きいと思っています。
これは難題ですが、なんとか乗り越えていって欲しいと願っています。
さて、カウンセリングを受けて、現在に起きている表層的な問題だけ解決したらよいと考えておられる方もいます。
残念ながら、このような「よいとこ取り」のような考え方では、何事もうまくいきません。
具体的に言うと、不登校の子どもが通学するようになったら、本当に問題が解決しているのかということです。
不登校というのは表象の現象であり、その奥の内面に何が起きているのか、その部分が解決していないかも知れません。
不登校の原因は、いじめなのか、対人関係なのか、環境なのか、学力なのか、内面的な問題なのか、家族内の問題に起因するものなのか、進路のことなのか、いろいろなことがあるでしょう。
そこで当事者や家族が、不登校という問題を通して、家族のあり方や親の姿勢や、当事者の希望や気持ちなどを受け入れて理解し、相互に努力していくことで新しい展開が起きてきます。
ですから、「子どもが学校へ行くようになればよい」というような安直な考え方でなく、子どもの不登校をよい機会にして、家族みんなで変わって成長していくことが大事なのです。
本当は、「引きこもり問題」も同じで、どうして引きこもっているのかを、家族みんなで考えていくところが大切だと思っています。
ここで大切なのは、「良い」「悪い」などの善悪での判断や、問題の原因になっている犯人探しのようなことでなく、起きている人生課題に対して、どのように応えていくかであると思います。
さて、人生課題に気づいておられる方は、「この問題があってよかった」「人生が変わった」と言われます。
これは、自分や家族が問題によって成長したことを、実感されておられるから出ている言葉だと思います。