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自閉症(スペクトラム)は「相手の目を見ない」説の誤解


 

昔、自閉症の子どもは「相手の目を見ない」と言われていました。

 

しかし、支援の現場の人間は、「目を見ないことはない」と、この説を疑っていました。

 

その原因を詳しく調べると、自閉症が言われ出した初期の頃に、ある学者が「自閉症は相手の目を見ない特徴がある」と論文で書いていて、その後の研究者がその論文の記述をそのまま繰り返しコピーして使っていったので、世界中に「目を見ない」という説が広まったようです。

 

 

『自閉症(スペクトラム)障害』は発達障害の一部で、「対人関係の苦手さ」や「こだわり」があるところが特徴です。

 

 

 

さて、「目を見ない」というところは、一部で当たっているところがあります。

 

これを訂正すると、相手を「注視しない」ということです。

 

目だけでなく、顔の表情も見ていません。

 

短時間は見るのですが、じっくりと見ていないのです。

 

直ぐに視線や注意が、他に向いてしまいます。

 

その特徴が相貌失認(人の顔が分からない)になります。

 

これは症候群ですので強弱があるのですが、人口の2パーセントの方に相貌失認の特長があるそうです。

 

私も他者の顔がなかなか覚えられないのですが、この特徴がある一人だと思います。

 

このことで大きく影響されるのは、「言葉の獲得」と「社会性の獲得」です。

 

まず、「言葉の獲得」です。

 

会話では、日常で視線の先の物が主語になります。

 

しかし、当事者は視線を追えないので、相手が何を主語にして言っているのか理解できなくて、そのために言葉の理解が遅れます。

 

 

 

次に、「社会性の獲得」です。

 

通常、行動の善悪は母親の表情によって学習します。

 

笑顔ならば「よい」で、怖い顔ならば「ダメ」です。

 

そのような時に、当事者は母親の表情を見ていないので、「よい」「わるい」の関係なく行動してしまうのです。

 

その結果で、社会性が育ちにくくなります。(これはADHDの多動と少し特徴が違います)

 

 

 

さて、この記事で何を伝えようとしているのかというと、当事者の問題は能力の問題でなく、学習の遅れにあるところです。

 

ですから、当事者にも理解できる方法で学習させることが大事になります。

 

また、それが本当の支援ということです。

 

視覚化・場面の構造化とか、認知行動療法とかと言われますが、それは当事者に理解ができる方法での支援のことです。

  

当事者への罰や叱責、脅しなどは害になるだけで、何の役にも立ちません。

 

ですから、当事者がどこで何に困っているのかを把握して、それを乗り越えていけるような支援をしてやってください。