失敗をした時に、「よい経験をしたね。」と言ってもらえるとうれしいですね。
本当はまずいことをしたのに、どこかよい経験をしたように感じることができるからです。
私は、このようなことが重要で、本当に必要な支援だと思っています。
さて、発達障害当事者は不器用なところがあって、失敗をすることが多いです。
また、失敗しないように努力することで、エネルギーを使い果たしてしまい、くたくたに疲れてしまいます。
そんな発達障害当事者には、あまり失敗経験をさせない方がよいでしょう。
そこで、支援が大事になってきます。
親は当事者に失敗させないように、先回りして困難を回避させようとします。
それは、親心というものです。
だけど、何も失敗経験をしない方がよいのかというと、疑問です。
単純に考えると、成功体験がやる気を出させ、失敗経験が意欲を削ぐのですが、そんな単純なものでありません。
幼い子どもが、「僕は将来、プロ・サッカー選手になるんだ。」とか「オリンピック選手になるんだ。」と言ったりしますが、これはその実現の難しさを知らないからです。
その幼い子どもが、さまざまな経験を重ねることで、自分の能力を知っていくのですね。
自分にできることと、出来ないことに気付いていきます。
これは失敗する経験の中で、自分の能力を自覚していっているわけです。
ですから、失敗をする経験も大事になってきます。
これは、当事者の社会化です。
失敗を経験することで、自分はどんなことが苦手なのかが分かり、どのような対策を立てたらよいのかを自ら考えます。
また結果的に、自分はどのようなことが得意なのかも気付けていけます。
ですが、親などの先回りばかりでは、そのような経験ができなくなってしまうのです。
ですから、失敗する経験も大事になるのです。
大脳の成長発達に関わるのです。
ここで問題なのは、失敗した時のフォローです。
「よくがんばったね。」とか、失敗したことを心からほめることが大事です。
しかし現実は、「あんたは何をやってもできない駄目な子だ。」とか、「あんたは何もいいところがない。」とか、当事者に対して否定的な評価をしてしまいます。
それにより、当事者は自己否定状態になってしまうのです。
多くの発達障害当事者は、自己否定的な傾向があります。
それは、まわりの者から、ぼろくそに言われ続けているからです。
そうならないように、まわりの者は気をつけたいですね。
大事なのは結果でなく、物事に取り組む姿勢にあると考えます。
成功も失敗も、その両方が大事であると大人自身が受け止める社会になって欲しいと願っています。