繰り返し手を洗っている自分の子どもの様子が気になり、保健所へ相談に行った親がいます。
保健所の職員は、それならばと子どもの精神科への受診を勧めました。
言われた通りに精神科へ受診すると、薬を飲ませるように指示がありました。
強迫的な行動を治さなければならないと、薬を飲み続けているうちに、服薬しないと落ち着かない状態になりました。
知らず知らずの間に薬物依存が酷くなって、いろいろな精神症状が出て、大人になった頃には、精神障害となってしまった人がいます。
保健所というのは、市民の健康にかかわる相談を受けてくれる場所なので、軽い気持ちで行ったわけです。
「保健所へ行かなければ、こんなことにならなかった」と、現在は悔やんでおられます。
さて、この親の行動が軽率であったと、誰が批判できるでしょうか。
保健所へ相談に行くのは、ごく常識的な判断だったと思います。
問題は保健所の対応で、事案を病院へ送ればよいという安易な考えのところに、私の首が傾げます。
私のところにも強迫性障害の相談が結構あります。
手を洗い続けることや、靴紐を結ぶのに何十分もかかるという、不可解な行動の相談です。
そんな時、親はあまり心配し過ぎない方がよいと返事しています。
手を洗い過ぎて死ぬ人がないこと、生死に関わらないことは、放っておいてもよいことを伝えます。
子どもが神経質となって、強迫的な症状を出しているのは、何か困ったり悩んだりしている問題があるので、そちらの方を考えてやるのが大事だと伝えます。
みなさんも考えて欲しいのですが、異常行動という表面的な行動に出すことで、自分で不安や心配を処理しているわけです。
もしも、そのことで気持ちが落ち着くならば、その行動を止めさせないで、むしろ、させなければないかも知れませんね。
また、異常行動が出ないように規制や禁止をかけて、そのことに蓋をしてしまうと、困り事や悩み・不安などが内在化してしまい、不可解な行動が外に見えなくなりますが、脳内や身体内に問題を抱え込んでしまいます。
そちらの方が怖いですね。
それから、薬で不可解な行動が消えたとしても、本当の問題は解決しておらず、ずうっと持ち続けることになります。
もし子どもが、手を洗ったりすることで気持ちが落ち着くのならば、やらせてやったらよいと思います。
私は50才や60才になっても手を洗い続けている人を、見たことも聞いたこともありません。
ですから、不安な問題が解決していけば、強迫行動も消えていくのだと思います。
さて私たちも、何か失敗した時に、次回は失敗をしないように何回も繰り返して点検しますよね。
強迫性障害は、それと同じようなものだと思います。
親も、心配をし過ぎないようにすることが大事です。
また、何に悩んでいるのだろうと、子どもの困りごとに着目し、ストレスから解放されるように助けてやってください。
やはり、薬ではない方法がよいと思っています。