当事者が家で暴れて大変な状態となることがあります。
そんな時、家族は当事者を強制入院させることを考えることになります。
自分たちの身の安全を考えると、そうしなければ仕方がないでしょう。
しかし、その家族の方の話を詳しく聞いていると、当事者が勝手に向精神薬服用を中断しているケースが多いのです。
向精神薬には副作用があって、いろいろな不快症状が出たりします。
そんなこともあって、いつの間にか薬を飲まなくなっている方もいるのです。
向精神薬をビタミン剤と同じ程度に考えていて、「少々、別に飲まなくてもかまわないだろう」と、軽く考えていることが多いようです。
ですから家族の者は、薬物服用の中断が原因で暴れているのだと理解できる方があまりいません。
それよりも、病状が悪くなっていると思ってしまうわけです。
それで病院へ入院させなければならないと考えるのです。
ですが、起きている問題は病状の悪化でなく、薬物の中断による禁断症状です。
急に薬を飲まなくなった結果で、離脱症状が起きているわけです。
当事者は、苦しくて暴れているわけです。
しかし、当事者も家族も、それが薬の中断によって起きていると思えないので、大騒ぎになったりします。
異常な暴れ方をするので、警察から自宅へパトカーを呼んだりします。
その時、警察は医療については素人なので、精神科病院への受診を勧めたりします。
その流れの中で入院している当事者が多くいます。
問題は、入院をしたら病状がよくなるのかというところです。
残念ながら、薬剤の投与量が増えて状態はなかなかよくなりません。
薬物中断による禁断症状を抑えるには、それまで服用していた薬物の倍の量が必要だと言われます。
ですから薬物量が増えて、副作用のリスクも以前よりも増えてしまうわけです。
さて、大事なのは、勝手に向精神薬を中断しないところにあります。
統合失調症とは、分かりやすく言うと脳神経細胞でのドーパミンの出過ぎが原因であり、向精神薬の作用で神経細胞のドーパミン受容体の入り口を塞いで流入を止めることで、症状を緩和しています。
ですから、薬を飲むことで、ドーパミン流入量を少なくして、それで落ち着いた精神状態になっていられるのです。
ですが、急に薬物服用を止めると、受容体のところにダムのように溜まっていたドーパミンが、雪崩を打つかのように受容体へ流入するので、興奮して異常な状態になるわけです。
この状態を止めるのには、さらに大量の薬物が必要になるということなのです。
私が伝えたいのは、当事者が暴れている時に病状が悪くなったと考えないで、きちんと薬物を服用しているかを確かめて欲しいということです。
よくあるのは、当事者の病状が悪くなったと家族が思って、絶望的になってしまうことです。
そして入院させてしまうのが、パターンのように思います。
これは、薬物による二次障害なので、決して病状が悪くなったのでないのです。
本当は、絶望に至る必要がないのです。
さて、発達障害の方にも、向精神薬が処方されていることがあります。
家族も当事者も、向精神薬の勝手な中断をしないように気を付けてください。
もし、薬を止めたいと望むのならば担当医師に相談して、減薬治療の後に断薬を目指してくださいね。